つくづく、嫌になる。
別々の部屋に居るとはいえ、部屋は隣。
そして母の電話する声は大きい。
さっきから、姉にあたしの愚痴を延々と言ってるの…最初から最後までしっかり聞こえているのよ。
月はこうだから腹が立つ
月はああだから可愛くない
そんな聞きたくもないこと、ずっと聞こえているのよ。
寧ろ「聞かせたいの?」って疑っちゃう程にね
いつだって、こう在りたい。こうしたい。こんな風になりたい。
そんなものは幾らでもあるし
―戻りたい…―
そう願ってしまうような時もある。
だけど、生まれた時に私達が渡されたのはただただ死に向かうだけの片道分の切符だけ。
"どう生きるか、自分次第よ"って片道分だけ渡される。
戻りたくたって、戻れやしないし
ただただ前に前に、死に一歩一歩向かうだけ。
こうやって生きていく中で、どれだけのものを失って、どれだけのものを手に入れていけるんだろう…
タイムカプセルに入れた手紙を書いたあの頃みたいに、キラキラした未来なんて、今のあたしには到底描けない。
十年前はあんなに未来をキラキラした世界で描けていたのに、不思議。
十年前のあたしが望んだあたしには、程遠い今のあたし。
それを知ったからこそ描けなくなったのかな?