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幸せは、何処に…?



小さな、かわいらしい白い犬
帰ったら必ず私を出迎えてくれる母
私を精一杯、可愛がってくれた父
ちょっと大人げない、穏やかな姉




…何の変哲もない、ありきたりな家庭が、家族が、あの日のあの場所にあった。たしかにあった。



一体、何がこのありきたりだった家庭を壊した?


一体、何処から歯車は噛み合わなくなってしまったのか



わからない。わからない。わからない。わからない。




些細な幸せがあったあの日に、戻りたいと切に願う。


代償が必要ならばいくらでも支払ってやる。


この身を、この魂を、なにもかも支払ってやる。



…だけど、代償を支払う相手が何処にもいない。



ただ、取り戻したいだけなのに




幸せを、取り戻したいだけなのに


何故?どうして奪われなきゃいけなかったのか



何年経っても、何度季節を繰り返しても、わからない。何も。


愛して…くれていなかったの?


父は、家族を家庭を大事に想ってはいなかったの?



何故、壊れた
何故、奪われた




誰もが、当たり前のような顔をしてそれを手にしているのを見て、私は惨めで仕方なかった。


どうして、世の中離婚した家庭が溢れているのに、私の周りにはいないのだと腹立たしくも思った。



だから、幸せなフリをして笑っていた。

周りの誰よりも、私は幸せなのだと…思いたかった。




なんて、惨めで悲しい嘘だろう。

―羨望―





姉の、結婚報告の食事会。



一年と少し前のこと…


初めて見た、私の兄となる人。



姉を、気遣う、優しい人。


その程度の印象。

それ以外に、なんの思いも湧かなかった。



あぁ、優しい人と姉は結婚するんだ…その程度の感情。


父がいない代わりに、伯父と祖父が駆け付けた。



相手側の両親も兄弟も、私側の誰もが、嬉しそうに笑う食事会で、私は唯一人…冷めた気持ちで偽りの笑みを浮かべていたことに、一体誰が気付けただろうか。


その場しのぎの笑みを。



幸せになってね
兄さん、お姉ちゃん大事にしてね
月、いつか遊びに行くね
本当、今日は素敵な一日ね
今日を月は絶対忘れないよ


ニコニコ笑う私は、きっと誰が見ても、心底姉の結婚を誰よりも祝う、『いい妹』に映っただろう…

愛想のいい、ニコニコした、いい子。



…皮肉にも、これまで求められてきた事が、役に立った瞬間だった。


何時だって、いい子であることを求められてきた

沢山友達がいて、学校では責任あることを任されて…

望んだ覚えのないことを、やった。


愛されたかったから、褒められたかったから。両親に。

勉強もそこそこ。人間関係良好。
学校では、どんな人とでも仲良くする、分け隔てない。いい子。



それは、私に与えられた役だった。
与えられた役を演じる必要があった。だから熟した。それだけ。



正直、あの日…私は劣等感まみれだった。

私の方が、しっかりしているから
私の方が、顔が広いから
歳の離れた姉よりも早く結婚すると言われていた。

歳が近いならまだしも…9つも歳が離れているのに、だ。


別に、先越されたから…劣等感まみれだったわけじゃない。

なにもかも、私が手に出来ないものを簡単に掴む姉に、嫉妬していたのだ。


どんなに望んでも…私があの日の姉のように仲睦まじく、誰かと笑い合う日なんて、きやしない。

だって、愛なんて羽のように軽いものでしょう?

ふわりと離れていってしまうでしょう?


人の命は、永遠でないのに…何故、永遠の愛を神に誓える?

生まれ落ち、泣いた瞬間から私たち全ての生き物は、死へと…終わりへと歩んでゆくだけなのに。


愛、なんて子孫繁栄のための、人間に組み込まれたプログラムだ。

なのに人は愛は尊いと錯覚する。


こんな私を、「愛を信じられない可哀相な寂しい人間」だと思いますか、蔑みますか?


人の考えは、人の数だけある。

だから私は、愛を信じる人にどうこう言うつもりはない。


…これまで書いた事を見たら矛盾していると言われそうだけれど、私は誰かにこの考えを口にしたことは一度もない。

口にしてしまえば、温度を持ってしまうから。



あぁ…姉さんは、私が今もこんな場所に縛り付けられて動けないのに、姉さんは幸せになっていく


それが悲しくて寂しくて悔しくて…羨ましかった。
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