テディベア作家である岩本瑠璃子は、夫の聡と少々変わった夫婦生活を送っていた。
聡の妹・文が、夫の事を「お兄ちゃんはコミュニケーション不全で無自覚な無気力」と称するほどの変わり者だったが、妻の瑠璃子も文から言わせると「変わっている」のだった。
夕食を終えると部屋に鍵までかけて籠ってしまう聡との連絡手段は、もっぱら電話だ。
お茶が入ったけど飲む?などというごく普通の会話も電話越しだし、瑠璃子は寂しさを覚えていた。
「二人で寄り添い合って暮らせないとしたら、二匹のゴリラにさえなれないなら、それはやっぱりソラニンだわ」
テディベア作家として、家でずっと作業している妻に、特に不満はなかったはずの聡だが、出来かけのテディベアは晒し首の様で苦手だし、落ちているボタン一つ見ても、熊の目に見えて実は不気味がっていた。妻には内緒にしていたが、何となく妻も感じ取っているようで…。
『スイートリトルライズ』
著者
江國香織
発行者 株式会社幻冬舎
ISBN 4-344-00488-4
以下、追記で感想なので、ネタバレする上に主観入ってます。読んでない方や苦手な方はブラウザバックでお願いします。
長坂弥生は、夫の義母が痴呆で入院した後、義母が可愛がって飼っていた猫・ぎんなんちゃんを捨ててしまったという夫の発言にゾッとしていた。
結婚当初なら、夫がそんなことをする訳がないと手放しで信じられたのに、今はそれが出来ない弥生。
夫とギクシャクしたまま、弥生は数十年前の学生時代にホームスティした先の娘・アマンダを4日間泊めてくれないかと母のケイトに頼まれ、快諾した。
約束の日、空港でアマンダを待っていた弥生の前に現れたのは、彼氏と一緒に仲良く出てきたアマンダだった。
既にホテルを取ってあり、アマンダと彼氏はそこに泊まる。ケイトには自分から連絡するという。
「わかるでしょ?」
思わず笑ってしまった弥生は、若かった昔の“でたらめばかりを信じる17歳だった”自分を思い出し、快諾した。
“野心。それこそが前へ前へ進む原動力なのだし、それを恥じる必要がどこにあるのだろう。”
何処かで泣く準備はずっと前からしていたのに、号泣することが出来なかった。
そんな女性たちの等身大の姿を描いた、号泣にまつわる短編集?
『号泣する準備はできていた』
著者
江國香織
発行者 株式会社新潮社
ISBN 4-10-380806-3
以下、追記で感想なので、ネタバレする上に主観入ってます。読んでない方や苦手な方はブラウザバックでお願いします。
著者が気に入っている美術作品について、著者独自の視点を交えた作者や作品の評論的な本。
薄くて絵本みたいです。
『日のあたる白い壁』
著者
江國香織
発行者 株式会社白泉社
ISBN 4-592-73184-0
以下、追記で感想なので、ネタバレする上に主観入ってます。読んでない方や苦手な方はブラウザバックでお願いします。
両親の方針で、義務教育に逆行した四人兄弟は、ある日突然、父親から小学校に通うようにと言われる。
どうやら腹違いの末っ子・卯月の母・麻美が、小学校に通わず家庭教師や両親と勉強をしている状況に苦言を呈したようだ。
父違いの姉・望はその事に気付くが、妹・弟たちは満を辞して小学校向かうが、簡単すぎる勉強や集団生活にへきへきする。
勉強は出来るが、協調性ない兄・光一、学習能力がない弟・卯月、問題児の私・陸子は、浮いた存在になってしまう。
そして…。
『抱擁、あるいはライスには塩を』
著者
江國香織
発行者 株式会社集英社
ISBN 978-4-08-771366-4
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