引き続き戯言×復活の復讐嫌われ。
※戯言キャラ全員転生設定。戯言・人間シリーズ全員生まれ変わってから死んでません。
夢主設定。
井伊×××
2重人格者。女。
1人は戯言遣い、1人は
白雪鈴。
基本的に戯言遣いが主人格で鈴が副人格。
見た目は髪の長い、いーちゃんの女装版。
ツナたちと関わるようになって鈴が主人格として出てくることが多くなる。
ぶっちゃけ急に非公開にした紫苑の設定ですが、読んでいる人いないと思うので。
綱吉 side
「 鵜呑みにするから、騙されるんだよ 」
いつだったか、井伊さんが言った言葉が何故か頭に残ってた。
――――…井伊さんが、落ちてから1ヶ月。
4階の教室から落ちた井伊さん、いや、井伊は
死んだ。
お葬式にも出た。皆嫌そうな顔をした。それでもクラスメイトだから世間体を考えて、仕方ない、そんな感じ。
自殺か事故か。その辺のよく分からない曖昧なところだけど、それでもニュースにならなかったのは吃驚した。今時ニュースにならないのかな、なんて。それともリボーンがボンゴレの力で隠したのかもしれない。
井伊の死に顔は見なかった、見れなかった。
と言うか、井伊の両親以外、顔を見た人はいないみたいだ。
「貴方が、沢田綱吉くん?」
「…え?」
俺は井伊のお母さんに声をかけられた。
見て分かるほどにやつれて、目を腫らしていた。子供を亡くした母親、と言うのは皆こんなのかな。
「あの子、貴方のことをよく喋っていたから」
井伊のお母さんは少し悲しそうに笑って井伊の遺影を見た。
制服姿の無表情な遺影。井伊は絶対に笑わない、写真やプリクラを取る性格じゃなさそうだから、その無表情な遺影は多分生徒手帳のもの。
駄目だ、井伊は彩花ちゃんを苛めた最低なやつなのに。
駄目だ。
――…井伊のお母さんに、流される。
「そう、ですか」
気まずくて、視線を反らす。井伊のお母さんが力なく苦笑したのが分かった。
井伊が、俺のことを?
彩花ちゃんとの一件がある前、井伊がよく言っていた。
無表情で淡々と、それでも何度も。
『綱吉くんは優しいね』
「綱吉くんは、優しいのね」
「ッ、」
どうしようもなく、井伊と井伊のお母さんは当たり前だけど、親子だった。何と言えば良いのか分からないけど、あ、親子だ。って直感的に思った。
やっぱり力なく微笑んだ井伊のお母さんは井伊そっくりで、井伊も井伊のお母さんもどうしようもなく救えないほど、優しかった。
だって。あんなに傷だらけで肌が変色してて、あんなに異常な状態なのに何も言わない、何も聞かない。
この親子は、優しずきる。
「あの子のお葬式に来てくれて有難う」
「…い、いえ、俺は」
俺は、井伊を
殺したのに。
俺は『分かった』と言って窓に足をかけた井伊を引き留めることが出来なかった。吃驚はしたけど、死ねばいいと、死ぬなら彩花ちゃんがこれ以上悲しまなくてすむんだ、って。そんなこと、井伊のお母さんには口が裂けても言えない。
唇を噛み締めて、俯く。会釈すると早足でその場を離れた。
「…」
あれから1ヶ月。
クラスも並中も平和になった。井伊の机はそのままだけど、それさえもなかったものとして扱われる。
俺の『隣の席』は、未だに異臭を漂わせていてなかったことには出来なかった。
俺の隣の席――井伊の席は確かに俺の隣にあった。勿論、退かすことも出来た、けどそれをしなかったのは俺の心の中に井伊を殺したと言う罪の意識があったからだろう。
「まだ、気にしてるんスか、十代目」
優しすぎますよ、あいつなんかのために十代目がお心を痛める必要なんてありませんって!
そう続いた獄寺くんの言葉。
『綱吉くんは優しいね』
井伊の言葉が、俺を苦しめる。
「そうだぜツナ、あんな奴のことなんか気にする価値もねえよ」
「…うん」
山本も獄寺くんの言葉に賛成して、にこやかに笑う。
彩花ちゃんは心配そうな表情で眉を下げると俺の顔を覗き込んだ。
「ごめんね、ツナぁ…あたしのせいで」
「え!?ううん、彩花ちゃんのせいじゃないよ!て言うか、気にもしてないしね!」
「ほんとお?」
「う、うん!」
嘘をついた。井伊のお母さんが、子供を亡くした母親のあの力ない笑みが、俺の罪の意識を強くした。
駄目だ、気にしたら井伊の味方に、俺は悪い奴から彩花ちゃんを守っただけだ。
井伊がいなくなって、クラスも並中も平和になった。
いつも通り俺はダメダメで、獄寺くんがいて、山本がいて、彩花ちゃんが笑ってて、京子ちゃんが可愛くて、黒川はやっぱり子供が嫌いで、雲雀さんは出会い頭に殴りかかられそうで怖くて、リボーンはスパルタで無茶苦茶で。
そこに井伊はいないけど、俺の日常は元に戻った。
―――…その翌日のHRまでは。
「今日は転校生がいる」
担任の言葉にクラスがざわついた。
漫画では転校生をあらかじめ知っていたりするけど、そんなの近くの中学の友達が――とか以外、知っているわけがない。
転校生。その言葉を聞いて、何人かがさっ、と彩花ちゃんを見た。俺もその1人。
彩花ちゃんは表情を曇らせていて隣の席の山本が肩を引き寄せていた。
もし、井伊みたいな人間だったら。
そんな不安が過る。井伊は転校生とかじゃなかったけど、でもこんなことがあったばかりだ。
「入れー」
間延びした先生の言葉がして、ワンテンポ置いて扉が開いた。
途端、ざわついたクラスが静まり返る。
どこかで誰かが息を飲む音が聞こえた。
「初めまして」
凍りつくほど綺麗な男の子はにこりと微笑んだ。
「京都の中学校から来た、石凪萌太くんだ」
物語の始まり、物語の序章。
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