とある少女とちょっと影のあるエロハンサム店主。
その背景には、1人の死神の姿。
Flow at timeに関連した話。
「浦原店長おおお!!!」
バン!と扉を壊れる勢いで浦原商店に飛び込んできたのは1人の少女。
「石田くんが冷たいんですううう!!!」
靴を脱ぎ散らかして、中に入ると茶を啜っていた浦原商店店長――浦原喜助に飛び付いた。
「女の子には比較的優しいのに、私だけ冷たいいいい!!!」
「……。」
抱き着かれた浦原は、しばらく考えた後一言。
「美成(みなる)サン、襲われたいんスか?」
「いやあああ!!!」
一瞬で飛び退いたのは言うまでもない。
「浦原店長セクハラ!」
「何もしてないッスよ」
「した!セクハラ発言した!」
「ちょっと影のあるエロハンサム店主ッスから!」
「キモ、」
「バイト代下げますよ」
「全力ですいませんでしたあああ!!」
勝者、浦原喜助。
土下座の勢いで謝る美成に、浦原は溜め息を吐き出した。
――…田渕美成(たぶち みなる)
2ヶ月ほど前からここ、浦原商店でバイトをしている現役女子高生だ。
童顔と言う特徴を除いてしまえば、特に可愛いわけでもない。
浦原もよく知る滅却師、石田雨竜に恋する至って普通の女子高生。叫び癖が少々気になるが、個性の定義から外れるほどではないのでやはり普通の女子高生だ。
「すぐに仕事しますね!」
「お願いします」
「はーい」
大人しく仕事を始めた美成に溜め息を1つ落とすと、浦原はまた茶を啜ることを再開した。
この店、バイトがいなくても普通に営むことが出来るのである。
――――…
「喜助、」
「何スか、夜一サン」
美成が帰った後。
猫の姿の夜一は、浦原の隣まで来ると溜め息をついた。
「あのバイトを通して何を見ている」
「何とは?」
「皆まで言わせるな」
「……だって、そっくりじゃないっスか」
誰が、とは言わないものの、夜一も予想していた人物のことで、眉を潜める。
あの無邪気な笑顔、幼い表情。
それはとある死神によく似ていた。
「それを知ったら、傷付くことも分からんか」
「傷付く?そんなわけないッスよ、美成サンは石田サンが好きなんスから。アタシが勝手に思ってるだけッス」
「誰があのバイトだと言った」
「……じゃあ、誰のことを言ってるんです?」
「鈴」
何の躊躇いもなく、すぱっとその名を口にすると、浦原も予想していたのか特に何の反応もない。
「いくら会えないからと、そんなこと許されると思っとるんか、喜助」
「………」
「もし鈴が、喜助に似た死神を喜助に重ねていたらどうするつもりじゃ」
「嫌ッス」
即答した浦原に、溜め息を吐くと夜一は断言した。
「なら、あのバイトを重ねるはやめることじゃ」
「……っ、」
「どうしてもやめれないなら、死ぬ覚悟で会いに行け」
「アタシは尸魂界を永久追放されてるんスよ?」
――そんなこと、出来るわけないじゃないですか。
苛立ちを隠せない浦原の声色。対して、夜一はいつもに増して冷めていた。
「お主の、感情はその程度だったってことじゃな」
踵を返した夜一。
1人になった居間で、浦原は強く握りしめた拳をちゃぶ台を叩きつけた。
さまよう感情。
「……会いたい、鈴に、」
会いたい…っ
空気に溶けた言葉が想い人に届くことは、ない。
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早く浦原さんと鈴の話が書きたいけど中々進まないのでここで吐き出してみた。
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