人の時が流れる世ーー…
妖の刻が流れる世ーー…
2つの時と刻が交差する道の先にーー…
その商店街は、キミの前に現れる。
ようこそ!妖怪横丁へ!
近づく紅葉と、冬の寒さを象徴する風。
行き交う人々は、各々なりの秋を楽しんでいる様に見える。
社会の街を、文明もまたーー…行き交う。
行き交う人の時が流れる世を、泳ぐように、1台のスクーターが走っている。
真新しいスクーターである事は、一目瞭然で確認出来るものの…信号待ちをするたびに、っ?!(笑いを堪える)と、聞こえて来るような表情をされる。
しかし、運転手はさほど気にしていないのか?
頭を守る為に被ったヘルメットと、視界確保の為にするゴーグルが邪魔をし…表情を伺う事が出来ない。
が、口遊む歌が聞こえて来るあたり…どうやら、気にしていないようだ。
渋めの、落ち着いた緑色のスキニー。
白のTシャツに、山吹色のギンガムチェック。
黒のダウンベスト。
ーー…の、仕度をしている運転手。
一見して、ごくごく普通の仕度をしている運転手だが…問題は、その後ろ姿にあった。
「仕事中につき、エサやり禁止。」ーー…
と、なまはげのイラスト付きポスターが…黒のダウンベストに貼られていたのだ。
正確には、半紙に朱墨で書かれたものだが…なまはげのイラストだけは、黒墨で描かれている。
スクーターの運転手は、信号待ちの際、時々携帯の画面で地図を確認しているようで…
「次の信号を左折し、右側直ぐの酒屋さんを右折…ね。」
携帯の画面で確認し終わると、直ぐに携帯を片付けて運転を再開する。
確認した道を進んで行くと、一軒の民家に到着した。
古びた民家の前に、スクーターを停めると…運転手は、ゴーグルとヘルメットを取った。
水気を含んだ藁のような色をした髪に、漆塗りされた黒の瞳。
頸が隠れるくらいの後ろ髪を、オレンジブラウンの太いゴムで一纏めにしている。
外見年齢からして、歳若い青年。ーー…と、いった感じを受ける。
青年は、庭先へ足を踏み入れると、玄関前に設置されたチャイムを鳴らした。
しかし、暫くしても…家主の応答はなく、青年はやや首を傾げて、頭上に疑問符を浮かべた。
『掴まされた、か?』
揶揄いの電話だったのか?っと、肩を落としつつも…確認のため、ドアノブに手をかけるとーー…
ガチャ……
玄関のドアが開き、青年は恐る怖る…慎重に、ゆっくりと玄関のドアを引いた。
「すいませぇ〜ん。方言(なまり)屋ッスぅ〜。悪い包丁(こ)はいねぇがぁ〜?」
青年が、おっかなびっくりのまま…小声で訪問したのを伝え、ドアを開けて行く。
すると、ーー……
「わんっ!!」
「っ?!?!」
玄関のドアに体当たりをし、ドアを抉じ開けるようにして…大型犬が、青年目がけて飛びかかって来た。
ドアの向こうにいた青年は、ドアに顔面を強打した痛みもつかの間ーー…大型犬に飛びつかれ、青年は押し倒される形で転倒する。
顔面の痛みと、転倒した際の痛み。二重の痛みを受けつつ、上に乗っかた大型犬に顔を舐めらる。
尻尾を全力で振る姿からして、どうやら…青年を歓迎しているようだ。
「グラっ!!やめなっ!」
玄関の奥から聞こえて来たのは、大型犬を叱咤する老婆の声。
張りのある老婆の声に、大型犬は青年の顔を舐めるのを止め…老婆の方を向く。
青年は、顔を上げて老婆の姿を確認すると…再び倒れ込んだ。
「すまないね、ガキんちょ。アンタが、方言(なまり)屋に入ったっつぅ〜新人かい?」
悪怯れる様子もなく、老婆は豪快に笑ってみせると…側に纏わりつく大型犬の頭を撫でた。
*現在、この創作小説は製作途中につき、不定期更新になっております。
しかも、短編になる確率が高い小説です。
御了承下さい。