目を開けて、また閉じて
ここはどこだろう?と思う。

春のような生温い温度で満たされていて、
まだ眠っているのか、現実なのか、判断がつかない。

このまま終わるという手もあるよ。
ぼくが笑えば、きみも笑う。
ぼくが真面目な顔をすれば、きみだってそうするだろう。
草木が芽吹き、若草色の大地がどこまでも続いている。
また、穏やかな風が吹いて。
どんな選択も、ぼく次第ということだ。

きみは不器用な手先で、
凍えるといけないから、と言って、
ぼくの首にマフラーを巻いた。


一生懸命に言葉を尽くしても、どうなるわけでもない、ということもある。

たくさんの可能性を探して、束ねて、
メモでいっぱいになったノート。

大切なことはいつも、あまりにシンプルすぎて、
そのまま、それだけを信じて生きるのは、人間には難しそうだな。
きみのせいじゃないよ。
楽しかった時間は本物。
でも、悲しかった時間も同じくらい、同じくらい本物なんだ。

どこからか蝶が一羽、ひらひら舞い降りて、鞄の上に止まった。


迷ったときは、いつもの丘の上で待ち合わせ。
ぼくたちのありふれた日常。

優しい言葉で満たして、それ以外何も分からなくしてくれる?

言葉にしなかった思いは、吐息に溶け、空気に混ざり、きみが気付いたようにこちらを見つめる。

そろそろ、選択をしないといけないね。


あ、飛んだ。


きみの視線が空に移り、
ぼくも同じように空を見上げる。

白い雲が白鳥のようだね。
トゥシューズを履いて、くるりと回る、ワルツのステップ。

もしこれが夢だとしても、
きっと現実と変わらない。


悲しくて泣いたこと、忘れることはないよ。
何度も、薄れかけては思い出して、強固にして。
あんまり強くなったから、いつか世界を壊すかもしれない。
そうなったらごめんね、って。

夢かもしれない今と、
現実かもしれない今。

きみの声は聞こえた。
ずっと聞こえてた、それでも。


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