ぼくたちの魔法はいつも誰かのためのものだった。
綺麗なものや美しいものは、それだけで何か意味を持つように見えるから、
中身は空っぽでも大丈夫。
歩いて、歩いて、歩き通した、その先にあったのは、
暗闇に包まれた銀河の無数の星。
街を抜けて、空を抜けて、地球を抜けて。
最後はみんな、生まれたところに帰るんだとしたら、
ぼくたちはずいぶん遠回りをしてしまった。
良かった。少しずつ救われるよ。
背中の翼もほら、戻ってきている。
失くしていただけだったんだ。
歩いて、歩き通して、
両足はもうぼろぼろになってしまった。
どうしても考えてしまうな、初めから翼があれば、さ。
責めるつもりじゃない、
ただ純な心で聞きたいの、
壊して、壊れてまで、旅をする理由ってなに?
「やがて、隣同士にある舟も、風の流れとともに離れていってしまう。」
「今あるこの距離は、これから縮むことはなく、このままゆっくりと、確実に離れていくのさ。」
「それでも最後に愛は残ると、言ってくれる?」
きら、きら、と星が呼応するように光る。
愛は残るよ、と星たちは歌っている。
ぼくはひとり遠くでその光景を眺めていた。
それは美しい光景で、ぼくらの愛の終わりでもあった。
きみと星たちはどんどん先に進んでいって、遠ざかっていって、小さな点になって、いつまでも点のまま。
ーー綺麗なものや美しいものは、それだけで何か特別な意味を持つように見えるから……
誰も居ない部屋に、冷めてしまったスープ。
そのまま霞んで、消えて、忘れてしまって。
おやすみ。
ずいぶん遠いところまで来たね。
長旅は疲れた?
銀河では、一年だろうと、一兆年だろうと、
たいした違いはないの。
触れられないなら、どちらも同じ。
どちらも遠い小さな星、それだけ。
背中/スープ/おやすみ