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赤也 社会人 小話 ハンドクリーム

社会人。
びびび微エロ



滑り込ませた手の甲が、チクリと引っ掛かって痛む。
思わず左手を上げて見ると、彼は不思議そうな顔をした。


「指ガサガサじゃん!痛そう」
「あー…冬はたまにこうなるんだよな」
「ていうか私も痛いし」

つないでいた手を離すと、赤也はムスッとしてまた強引につなぎ直した。嬉しいけど、ささくれた指先が当たって痛い。


「帰ったらハンドクリーム塗りな」
「おー」

仕事終わりの時間がたまたま重なって、久しぶりの一緒の帰り道。

最近はお互い忙しくて、一言も交わさない日もザラだった。

冬の夜は冷えるけど、今日はつらくない。何気ない会話が、こんなに嬉しいなんて。



「もう荷物片付けたの?」
「全部置いたまーんま」
「お弁当、今出さないならあとで自分で洗ってよー」


帰ってきて気が抜けてしまったのか、間延びした声が返ってくる。

テレビの前に横になる赤也はこちらを振り向こうともしない。
いつもだったら母親みたいに小言を言ってしまうんだけど、今日は飲み込んでおく。

洗い物を終えてやっと一息、ハンドクリームを手に取ると、ずいと隣から手が伸びてきた。


「俺も」
「このくらい?」
「そうじゃなくて、アンタが塗って」
「なんでよ」
「いいから、いいから」


この甘えたが…と思いながら、カサついた手にクリームを擦り込んでいく。

意外にもゴツゴツ感のある手。
目が大きくて顔立ちも幼いから気付きづらいけれど、結構男らしいタイプだと思う。

可愛げがあると年上の人からモテたみたいだけど、私は赤也の男らしいところが結構好きだ。


「爪も、もう切らないとね」
「ん…」
「仕事、このあとも忙しいの?」
「んー…まあまあかな…」


伸びて角張った爪の端や、指の間も丁寧に。
こんな風に手を触ることなんてなかなかないから、これは役得だ。
クリームを塗るのを言い訳にして、赤也に沢山触れられる。



「赤也…?」
「ん…」
「眠いの?」
「いや、つーか…」


大きめのパーカーの裾を上げて見せると、下腹部の布がぴんと張っている。
私が動揺したのが分かると、赤也はニヤッと笑った。


「なんか手つきがやらしーなーと思ってたら、こうなっちまった」
「そんなつもりじゃ…」
「分かってる、でも、いいだろ?」


赤也の顔がゆっくり近付いてきて、唇が触れる。
そのまま、覆いかぶさるようにキスが続く。
お腹から肌着を捲られて、侵入してきた指先がどんどん上に上がってきて、


「痛った!ちょっと無理!その指じゃ無理!」
「え…」
「そのガサガサ治してからじゃないとしないから!」
「えー…マジかよ…」



それから、忙しくてもハンドクリームだけはちゃんと塗るようになったとかならないとか。



木手さん

お互い社会人。木手さんは社会人プロ設定。







月刊テニス雑誌の、ちょうど中間あたり。
他の選手と抱き合わせだけれど、ちゃんと写真も名前も載って、知った顔が掲載されている。

注目の若手選手として、恋人が紹介されるのは誇らしい。
そこにはいつもの鋭い目つきとは違って、にこやかな表情でインタビューに答える木手くんがいた。


(これ見た人は、優しそうな人だって思うんだろうな…)


普段は、自分にも他人にもあんなに厳しい人なのに。まるで別人みたい。

多くはない文面からでも、彼が高く評価されていることが分かる。
それに応えるかのように、これからの選手としての展望を語る姿に、なんだか木手くんを遠く感じた。


ーーこの人、ほんとに私の彼氏なんだろうか。滅多に見せてくれない穏やかな表情が、少し憎らしい。




ここのところ、デートはもっぱらショッピングだ。
数少ない休みに遠出させるのは気が引けるし、練習で疲れているのに無理はさせたくない。

いつの間にか、あまり力の入ったデートはしないようになっていた。


「次、あのブランドを見てもいいですか」


二人で歩いていると、前より人の視線を感じることが増えた気がする。
木手くんの姿を見て、あからさまに表情を変える人だっている。

あんな風に雑誌の取材を受けることもあるのだから、テニスに詳しい人なら気づくんだろう。
そうでなくても、180cm近い身長にこの風貌じゃ、目立つに決まっている。

いつもだったらなんとも思わないのに、今日は自分がどんな風に見られているのか、過剰に周りの目が気になってしまう。


「…ユキ?」


お店の窓ガラスに映る自分は、なんだか幼く垢抜けない。
今日のために新調したワンピースも、スラッとした木手くんの隣で歩いていると、服に着せられているみたいだ。

好きで付き合っているはずなのに、一緒にいると自信をなくしてしまう。

どんどんプロとして活躍していく木手くんと、そんな彼についていくのに精一杯の私。
きっといつの日か、住む世界が違うと振られてしまうんじゃないだろうか。


「疲れましたか」

「あっ、ごめん、なんだった?」

「…今日はずっとうわの空ですね」


木手くんが、近くのベンチに腰を下ろす。
慌てて隣に座ると、そっと左手が重ねられた。


「寂しい思いをさせて、すみません」

「…っ」

「俺といるのが、嫌になりましたか」


もう一度、ぎゅ、と手を握り直して、木手くんが顔を覗き込んでくる。

整えられた眉が、心配そうに下がるのを見ると胸が締め付けられた。

愛想を尽かされるとしたら、私の方なのに。この表情の時だけは、頼り気ない年相応の青年に見える。


「ごめんね、違うの、考え事してて…」

「悩み事ですか」

「悩みっていうか…」

「俺に、言えないことですか」


木手くんがここまで食い下がってくるのは珍しい。こうなったら、なにか言うまでは離してくれないだろう。
観念して、でも、少しずつ言葉を選んで話す。


「この前、木手くん、雑誌に出たでしょ。インタビュー記事も載ってる」

「あぁ、そういえばそんな取材も受けましたね」

「…すごいなぁって思って。前から、一緒に歩いてると、人に見られることが増えたし。今日だって、たぶん何人かは木手くんのこと知ってたよ」


話の意図が読めないのか、木手くんは怪訝そうな顔をする。


「…木手くん、どんどんすごい人になっていくから。元から、釣り、合わないのに、なんか、住む世界が、ちが…」


次になにか言ったら、泣いてしまいそうで口をつぐむ。
こんなこと言いたくない。久しぶりに会えたのに、どうしてその時間だけを大切に出来ないんだろう。

めんどくさい女だって、思われるのなんか嫌なのに。


「俺は、ユキが見られているんだと思ってましたよ」

「…?」

「ユキは、会う度に綺麗になっていますから。キミのことを見る輩が増えたんだと」


そう言って、木手くんは安心したように目を伏せる。
言われたことが理解できると、私も頬が熱くなった。


「キミがぼんやりしているのも、もう、他の男が出来たからかと思いました」

「そんなこと…」

「遠距離のうえになかなか会えない。
会っても近場のデートばかりで我慢をさせている。愛想を尽かされても当然だ。
…キミの周りには、キミと付き合いたがっている男だって沢山いるでしょう」


いつも完璧で、余裕のある彼が、こんな弱音を吐くのは初めてだった。
あの木手くんが、他人を気にしたり、嫌われるのを怖がるなんて。

困った顔の木手くんは、なんだか大型犬が叱られているかのようで愛おしい。
私に見られているのに気付くと、コホン、と一つ咳払いをした。


「実は今度の大会が終わったら、しばらく拠点をこっちに移すつもりなんです」

「そうなんだ…」

「ええ、…そしたら、こちらで一緒に住みませんか」


今度は、じっと真剣な表情でこちらを見つめられる。
突然の提案に面食らっていると、木手くんはここぞとばかりに畳み掛けた。


「住む家が同じなら、一緒にいる時間も増やせるでしょ」

「で、でも、それはさすがに…親にも言わなきゃいけないし…!」

「俺は構いませんよ」

「でも、なんで、急に、」

「急じゃなく、ずっと考えていたんです。
練習が忙しくなると、どうしても会う時間が減ってしまう。その隙に、他の男につけ入られないとも限りませんしね」


真面目に言っているのか、茶化しているのか、木手くんは表情を崩さない。


「…私、浮気なんかするつもりないけど」 

「分かってます、俺が、キミといたいだけです」


木手くんが、目を細めて優しく笑う。
雑誌の写真とは少し違う、不安の色の残る笑顔。



「嫌ですか?」

「嫌じゃ…ない、け、ど」

「住む世界が違っても、帰る所が同じなら、今よりは安心出来ませんか?
俺にとっては、釣り合いなんかよりキミを誰かに取られる方が問題だ」


もう、いつも通りの鋭い目つきの木手くんだ。
反論なんて聞く気はないだろう。仕方なく頷くと、満足そうに笑って立ち上がる。


「じゃあ、このままご両親にご挨拶にでも行きましょうかね」

「ちょっ…それ本気で言ってるの?」

「もちろん冗談です」


さっきとなにも変わらないのに、今度は周りの目がちっとも気にならない。
木手くんがあんまり上機嫌で、手を強く引くからだ。

きっとこれからも、彼といたら、お互いの違いにたくさん悩むんだろう。

でもこうして、気持ちを明かし合えたら、思ったよりずっと、長くそばにいられるかもしれない。








それでもまだ生きている

2013年と言えば、皇后陛下からくまモンに「くまモンはおひとりなの?」と素敵な質問が出た年…というかくまモンってそんな昔から有名なのね。今もバリバリ現役だよ。

そして個人的には就職してちょっとした頃、まだ仕事が楽しかったころかな?(笑)

まだその時は創作意欲があったんだなーと、ぼんやり考えております。

そして今、就職、退職、結婚ときて、主婦になったのにまた書こうとしているのである。人間そう変わらないのであった。

ベルフェゴール夢

夢といいつつヒロイン出てきません。若干の死ネタ。若干の暗さです。
一応10年後とかかな? 






これを見てるってことは、オレはもう死んだんだよな。
お前は泣いてる?それとも怒ってる?
きっと、怒ってるんだろうな。いつも、「そんなに無理しないで」って叱られてたから。

いつかこの日が来るってことは最初から分かってたけど、こうやって書いてみると少しさみしいね。
オレはお前を幸せにしてあげられたのかな。少なくとも、お前を悲しませた分は。


この前の誕生日、一緒にいられなくてごめん。前から約束してたのに。
お前は笑顔で送り出してくれたけど、悲しくないワケないよな。
友達のことで悩んで泣いてた時も、最後まで話を聞いてやれなくて、ごめん。
あの時お前が寝たふりしてくれなかったら、オレ、どこにも行けなかった。今さらだけど、ありがとう。


何度も、お前を解放したほうがいいんじゃないかって考えてた。
もっと普通の男と、ちゃんとお前を幸せにしてくれる男と付き合った方がいいんじゃないかって。
それでつらく当たったり、けんかして泣かせたこともあったけど、その度にいつもお前が引き戻してくれた。

本当はオレ、お前がほかの男を選んだらどうしようって怖かったんだ。
だから、お前が必ず俺を選んでくれたこと、本当に嬉しかった。


でも、それも今日でおしまい。お前もフリーになったワケだしさ。
好きなだけ遊んでいいし、どこに行ったっていい。もちろん誰を好きになったっていい。
お前くらいかわいかったら、彼氏くらいすぐできるだろーしさ。
オレの持ってるものは全部お前にあげるから、好きにしていいよ。
だから、オレのことなんか忘れて





「やっぱやーめた」


紙をぐしゃぐしゃと丸めて、投げようとして思いとどまる。
こんなもん見られたら、なに言われるかわかったもんじゃないよな。
ポケットの奥に、右手と一緒につっこむ。

「何を書いていたんだい」
「あー遺書だよ、遺書」

遺書、という言葉にマーモンが反応するのがわかる。
顔は見えないけど、付き合いも長いし感情の機微くらいは読み取れる。
ま、お互い様なんだろうけどね。


「財産分与で悩んでるなら、相談に乗るよ。手数料は取るけどね」
「そんなのいらないよ。全部あいつにやるから」


一瞬、オレじゃない男と並んで歩いてる姿が頭に浮かぶ。
…うっわ、すっげー腹立つ。
本当にそんなことがあったら、化けて出ちゃうかもしれないね。
相手の男を呪い殺して、「何でだよ」ってわめくかもしれない。


「…彼女はそんなもの、受け取らないって言いそうだけどね」


オレだけを好きでいてほしい。
オレが死んだら誰よりも泣いて、誰よりも悲しんで、それから、ずっと想っていてほしい。

そんな風に書いたらあいつ、きっと、本当にそうするんだよ。
でもさ、そしたらあいつ、幸せになれないだろ。


「いーんだよ、そんなもんしかないし」


ねぇ、オレ、あとちょっとだけお前といてもいいかな。
あと、ちょっとだけ。






仁王くん夢

暗くなった電車の窓に、映る自分に問いかける。

あなたはどうしてそんなに鼻が低いの?目が小さいの?どうして、どうして、どうして…

雑誌やテレビを見るのは好き。アイドルや女優さん、きれいな人を見るのは楽しい。どうしてそんなに鼻が高いの?目が大きいの?顔が小さいの?どうして、どうして、どうして…


「ユキちゃん、なに見とるんじゃ」


背中が、ふいにあったかくなる。肩の上に乗ったその顔をまじまじと見ると、雅治くんは少し首を傾げて見せた。その表情だけで、雑誌の巻頭グラビアが飾れそうだなんて思うのは贔屓目だろうか。


「どうして雅治くんはそんなにかっこいいの?」

「……その質問、もう聞き飽きたのう」


アイプチもメザイクもしてない、くっきりした二重の線を指でなぞってみる。それからすーっと通った鼻筋、少しだけ整えられた眉。

最後に頬をつねってみると、さすがの雅治くんもちょっぴり間抜けな顔になる。

体をよじって、わざとらしいくらいにぎゅっとくっつくと、結び切れない髪の散るうなじからほんのりと香水の匂いがした。ねぇ、これどこで買ったの。私の知らない、新しい匂い。


「私、生まれかわったら雅治くんになりたいなぁ」

「なんじゃそりゃ」

「それでね、そこら中の女の子と付き合うんだー」


私がそう言うと、雅治くんはためらいがちに笑う。本当にやってたらどうしよ。もしかして私もその一人だったり?

それともくだらないって呆れたのだろうか。でも、ほんとに思ったんだもの。


「そういう時は、『お互いが入れ替わって生まれてもまた結ばれようね』、って言うんじゃなか」

「ええー、ドラマの見すぎー」

「かわいくないのう」


視界を反転させて、雅治くんだけにする。ちゅ、と1つだけキスをして、どさりと隣に倒れこんだ。


「雅治くんにはわからないよー、容姿に恵まれない者の苦しみは」

「そうじゃな」

「うわ、そういう時は『俺なんか大したことないです』って言うんですー」

「おまえさんがさっきかっこいいって言ったんじゃろ」

「それは…そうだけど」

本当にわかっているのか、わかっていないのか。

私がわざと拗ねた顔を作ってみせると、今度はきゅーっと目を細めて笑ってくれる。

深い二重の線がまぶたにのみこまれて、目尻には細かい皺。

右に2つ、左に3つ。いつもの冷たそうな印象は、あっという間になくなってしまう。


「…俺は好きじゃよ、ユキちゃん」

「なにが?」

「このちぃこい目も、低い鼻も…ぷくっとした頬も。気に入っとる」


さっきの真似をするように、雅治くんの指先になぞられる。

無理やり二重にしたまぶた、わざとらしく主張するつけまつげ。鼻筋をすすーっと辿ると、仕返しとばかりに頬をつねられた。いひゃいよ、と抗議すると雅治くんがいたずらっぽく笑う。


「それから…この唇も。一番好きじゃ」


下唇を食むように吸われていたのが、今度はちゃんと合わされる。逃げようとすると頭を抑えられて、ますます奥まで入られる。

優しいのに、絶対逃してはくれなくて。くらくらしてきたところで、やっと解放された。


「かわいらしい顔になったの」

「……ばか」

「いい加減素直になりんしゃい」


ねぇ雅治くん。雅治くんって、どうしてそんなにかっこいいの。









たまにはこういうのもよかろ?ってことで勘弁して下さい…

オリンピックが東京に来る頃には30になっているという衝撃

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